「転倒転落のリスク因子、何度見ても頭に入らない…」
「どの患者が一番危ないか、選択肢で迷ってしまう…」——そんな悩みを抱えている看護学生のために、この記事を書きました。
転倒転落予防は、必修・一般・状況設定のすべての出題レベルに登場する超頻出テーマです。
この記事を読めば、以下の3つが身につきます。
- 最も転倒リスクが高い患者を正確に選べるようになる
- 転倒を引き起こしやすい薬剤を語呂合わせで即答できるようになる
- 身体拘束との違いを整理し、ひっかけ選択肢を確実に切れるようになる
関連問題を3〜5点分まとめて得点するための知識を、最短ルートで整理していきましょう。
転倒転落予防の基本を整理
国試では「転倒」と「転落」を混同させる出題がよく見られます。
以下の表で、定義の違いを最初に押さえましょう。
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| 転倒 | 同一平面上で体のバランスを崩して倒れること(例:廊下で滑って倒れる) |
| 転落 | 高いところから低いところへ落ちること(例:ベッドから落ちる、階段を落ちる) |
どちらの単語も「意図しない動作」によって発生するという点は共通します。
しかし、発生のメカニズムと予防策が異なるため、区別して理解することが重要です。
転倒転落の発生状況
公益財団法人日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業」の報告によると、転倒・転落は医療事故報告の中で最も件数が多いカテゴリのひとつです。
発生場所の内訳
| 発生場所 | 特徴・傾向 |
|---|---|
| 病室・ベッド周辺 | 最多。ベッドからの転落・立ち上がり時の転倒が中心 |
| トイレ・洗面所 | 夜間・早朝に集中しやすい |
| 廊下・ナースステーション付近 | 歩行中の転倒 |
| 浴室 | 湿潤環境によるスリップ |
発生時間帯
0〜6時(夜間〜早朝)に最も多く発生します。
理由は、夜間は照明が暗い・看護師の見守りが手薄になりやすい・睡眠薬の効果が残っている、という複合要因があるためです。
転倒転落のリスク因子
リスク因子は「内的因子(患者側)」と「外的因子(環境側)」に分けて覚えることが国試対策の基本です。
内的因子(患者側の要因)
| カテゴリ | 具体的な因子 |
|---|---|
| 加齢変化 | 筋力低下、平衡感覚の低下、視力・聴力の低下、反応時間の延長 |
| 疾患 | パーキンソン病、脳卒中後遺症、認知症、起立性低血圧、てんかん |
| 薬剤 | 睡眠薬・抗不安薬・降圧薬・利尿薬・抗ヒスタミン薬・抗精神病薬 |
| 排泄 | 頻尿・尿失禁(夜間のトイレ歩行が増える) |
| 既往歴 | 転倒転落の既往あり(最大の単独リスク因子) |
外的因子(環境・設備側の要因)
| カテゴリ | 具体的な因子 |
|---|---|
| 床・廊下 | 濡れた床、段差、コード類・荷物の散乱 |
| 照明 | 夜間の照明不足、足元灯の未設置 |
| フットウェア | 滑りやすいスリッパ、サイズの合わない靴 |
| 設備 | 手すりの未設置、ベッド高さが高いまま |
転倒転落アセスメントツール
入院時には必ずアセスメントを行い、転倒転落のリスクを数値化します。
代表的なツールを整理しましょう。
| ツール名 | 項目数 | ハイリスク基準 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| モース転倒転落スケール(MFS) | 6項目 | 45点以上 | 入院時スクリーニング全般 |
| ヘンドリッヒⅡ転倒リスクアセスメント | 8項目 | 5点以上 | 急性期病棟 |
| J-FRAT(日本語版転倒転落リスクアセスメント) | 複数項目 | 施設設定による | 一般病棟全般 |
モース転倒転落スケールの45点という数字は国試頻出です。必ず覚えておきましょう。
転倒転落予防の看護介入フロー
① アセスメント(入院時・定期・状態変化時)
↓
② リスク分類(低リスク・中リスク・高リスク)
↓
③ 予防策の立案・実施
・ベッドを最低位に設定する
・ナースコールを手の届く場所に置く
・滑りにくい履物(靴)に変更する
・夜間の足元灯を確保する
・離床センサーを設置する
・患者・家族への転倒予防教育
・夜間巡回を強化する
↓
④ 評価・再アセスメント(定期的に繰り返す)
国家試験で狙われる「3つの鉄板ポイント」
POINT1:「転倒転落の既往歴」が最強のリスク因子——年齢・認知症との混同に注意!
転倒転落のリスクを最も高める単独因子は「転倒転落の既往歴」です。
過去に転倒した経験がある患者は、再び転倒する確率が統計的に有意に高くなります。
ひっかけ選択肢の典型パターン
「もっとも転倒転落リスクが高い患者を選べ」という出題形式で、以下のような選択肢が並びます。
| 選択肢(例) | リスク因子 | 正誤判断 |
|---|---|---|
| 82歳・認知機能が低下している女性 | 認知症・高齢 | リスクあり(×最高ではない) |
| 80歳・降圧薬を内服している男性 | 薬剤・高齢 | リスクあり(×最高ではない) |
| 70歳・1か月前に転倒・骨折の既往がある男性 | 転倒既往歴 | ◎ 最高リスク |
| 75歳・糖尿病で視力低下のある女性 | 視力低下 | リスクあり(×最高ではない) |
「一番高齢だから」「認知症があるから」が最高リスクと思わせる選択肢が罠です。
既往歴=過去の転倒経験を最優先に判断することが正解への近道です。
POINT2:転倒を起こしやすい薬剤は語呂合わせで即答!
転倒転落リスクを上げる薬剤は5カテゴリが頻出です。語呂合わせで丸ごと覚えましょう。
語呂合わせ:「寝る・降りて・トイレへ・急ぐ・ヒス」
| 語呂 | 薬剤カテゴリ | 転倒との関連メカニズム |
|---|---|---|
| 寝る | 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系) | 鎮静作用・筋弛緩作用→ふらつき |
| 降りて | 降圧薬(Ca拮抗薬・ACE阻害薬など) | 起立性低血圧→立ち上がり時にめまい |
| トイレへ | 利尿薬 | 頻尿→夜間のトイレ歩行が増加 |
| 急ぐ | 抗精神病薬 | 錐体外路症状・起立性低血圧 |
| ヒス | 抗ヒスタミン薬 | 眠気・ふらつき |
この語呂を使えば「どの薬が転倒リスクを上げるか」の設問を即座に判断できます。
「薬を飲んでいる=すべて転倒リスクが上がる」ではありません。
上記5カテゴリに当てはまるかどうかで判断することが重要です。
POINT3:「身体拘束」は転倒予防の正しい手段ではない
転倒転落予防の問題で最もひっかかりやすいのが、「身体拘束」を転倒予防の選択肢に含めるパターンです。
ひっかけ選択肢の例
- 「ベッドから落ちないよう、ミトンで上肢を固定する」
- 「夜間の転倒を防ぐため、車椅子にベルトで固定して過ごしてもらう」
- 「安全のため4点柵を使用して離床を制限する」
これらはすべて原則として誤りの選択肢です。
身体拘束が許可される3要件(厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 切迫性 | 利用者本人または他者の生命・身体が危険にさらされている状態が切迫している |
| 非代替性 | 身体拘束以外に代替する方法がない |
| 一時性 | 身体拘束は一時的なものである |
この3要件をすべて満たさない限り、身体拘束は行ってはならないと定められています。
「転倒が怖いから」という理由だけでは非代替性・切迫性を満たさないケースがほとんどです。
転倒転落予防で「正しい」介入策
| 正しい予防策 | ポイント |
|---|---|
| ベッドを最低位に設定 | 転落しても被害を最小化 |
| ナースコールを手の届く位置に固定 | 自己判断での行動を防ぐ |
| 滑り止め付き靴・履物に変更 | 摩擦を増やしてスリップ防止 |
| 足元灯・夜間照明の確保 | 視認性の向上 |
| 離床センサーの設置 | 身体拘束ではなく見守り強化 |
| 環境整備(コード類・床の荷物除去) | 外的因子の除去 |
離床センサーは「拘束」ではなく「見守りの補助」なので、転倒予防の正しい選択肢として出てくることがあります。
混同しないようにしましょう。
実習や臨床での活用シーン
受け持ち患者のアセスメントで実際に使う
実習で受け持ち患者が決まったら、まず入院時アセスメント票や看護記録で転倒転落リスクスコアを確認しましょう。
多くの病棟では入院時にモース転倒転落スケールなどを使ってスコアリングしており、ハイリスク患者にはベッドへの注意シールや、カラーバンド(赤や黄色のリストバンド)が使われていることがあります。
実習中にこれらを見かけたら「なぜこの患者がハイリスクなのか」を自分でアセスメントし、根拠を記録する練習をしましょう。
これが国試の「どの患者がハイリスクか選ぶ」問題の実践トレーニングになります。
与薬・服薬確認の場面で落とさない
服薬指導や与薬の場面では、患者さんが飲んでいる薬に睡眠薬・降圧薬・利尿薬・抗不安薬・抗精神病薬・抗ヒスタミン薬が含まれていないかを確認します。
該当する薬がある場合は、
- 「歩くときにふらつきはありませんか?」
- 「夜中にトイレに起きることはありますか?」
- 「立ち上がるときにめまいがすることはありますか?」
と積極的にアセスメントする姿勢が重要です。
これは実習の看護過程でも評価されるポイントです。
環境整備は毎日の看護業務
転倒転落予防の中で最も基本的で、かつ確実に効果がある介入が環境整備です。
- ベッドの高さを最低位に戻す
- 床頭台の位置を患者が手を伸ばしやすい場所に置く
- 点滴ルートや酸素チューブが床を這っていないか確認する
- スリッパを履いていたら靴への変更を促す
これらを毎日のルーティンとして意識的に行うことが、転倒ゼロへの第一歩です。
実習中に「なぜこの環境整備をするのか」を説明できると、実習指導者からの評価も上がります。
患者・家族への指導(患者教育)
転倒転落予防は患者・家族の協力が不可欠です。指導のポイントを押さえておきましょう。
- 「何かあればすぐにナースコールを押してください。我慢しないでください」
- 「夜中にトイレに行きたいときは、必ず看護師を呼んでください」
- 「ベッドから降りるときは、一度端に腰かけて、ゆっくり立ち上がってください」
- 「靴はきちんと踵まで履いてください。スリッパは転倒しやすいので避けましょう」
これらは国試の状況設定問題でも「看護師として最初に行う指導はどれか」という形で出題されます。
【1分チェック】必修過去問に挑戦!
問題:(第112回看護師国家試験・必修問題 類題)
転倒転落のリスクが最も高い患者はどれか。
- 視力が低下している75歳の男性
- 降圧薬を内服している68歳の女性
- 1か月前に転倒して大腿骨頸部骨折をした70歳の男性
- 認知機能が低下している82歳の女性
正解:3番
解説:
本問は「転倒転落リスクが最も高い患者」を選ぶ問題です。迷いやすい選択肢を一つずつ整理します。
選択肢1(視力低下・75歳): 視力低下は内的因子のひとつですが、単独では最高リスクとはなりません。
選択肢2(降圧薬内服・68歳): 降圧薬による起立性低血圧は転倒リスクを高めますが、これだけで最高リスクとは言えません。
選択肢3(転倒・骨折の既往・70歳): 正解です。「転倒転落の既往歴」は、転倒転落リスク因子の中で最も影響が大きいとされています。過去の転倒経験は、身体機能の低下だけでなく「転倒への恐怖心による不安定な歩行」も引き起こし、再転倒リスクを著しく高めます。
選択肢4(認知機能低下・82歳): 認知症は重要なリスク因子ですが、「既往歴あり」の選択肢3を超えるものではありません。また、年齢が最高齢であることも理由になりません。
「最高齢」「認知症」に目を奪われず、「過去に転倒したことがあるか」を最優先に判断する習慣をつけましょう。
まとめ
転倒転落予防で絶対に忘れてはいけない知識を箇条書きで整理します。
試験直前の最終確認に活用してください。
- 転倒=同一平面で倒れる、転落=高所から落ちる(定義を混同しない)
- 転倒転落が最も多く発生する場所:病室・ベッド周辺
- 転倒転落が最も多く発生する時間帯:夜間〜早朝(0〜6時)
- 最大の転倒転落リスク因子:転倒転落の既往歴(年齢・認知症より優先)
- 転倒リスクを上げる薬剤5カテゴリ(語呂:「寝る・降りて・トイレへ・急ぐ・ヒス」)
- 睡眠薬・抗不安薬 / 降圧薬 / 利尿薬 / 抗精神病薬 / 抗ヒスタミン薬
- モース転倒転落スケール:45点以上でハイリスク
- 身体拘束の3要件:切迫性・非代替性・一時性(3つすべてを満たす場合のみ許可)
- 身体拘束は転倒予防の正しい手段ではない(離床センサーは拘束ではない)
- 転倒転落予防の基本介入:ベッド最低位・ナースコール設置・滑り止め履物・足元灯・環境整備


