ヒューマンエラー

医療安全・事故防止
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看護師国家試験の必修問題で「ヒューマンエラー」が出ると、「なんとなくわかる気がするのに、選択肢で迷う…」という経験はありませんか?

「医療事故」と「インシデント」の違いって何?

「スイスチーズモデル」って試験に出るの?

そんな不安を抱えている看護学生さんは多いはずです。

この記事を読めば、以下のことがわかります。

  • ヒューマンエラーの定義と種類が整理できる
  • 国試頻出のハインリッヒの法則の数字が確実に覚えられる
  • 「医療事故」「インシデント」「アクシデント」の違いがスッキリ整理できる
  • ひっかけ問題のパターンがわかり、本番で正解を選べる
  • 知識が実習・臨床でどう活きるかがイメージできる

ヒューマンエラーの基本を整理

ヒューマンエラー(human error)とは、人間が意図せずに引き起こす誤りや失敗のことです。

医療の場では、薬剤の投与ミス、患者の取り違え、転倒・転落など、さまざまな場面で発生します。

重要なのは、ヒューマンエラーは「個人の不注意や怠慢」だけで起きるのではなく、システム(環境・体制)の問題が背景にあるという考え方です。

この視点が、現代の医療安全の根幹となっています。

ヒューマンエラーの分類

ヒューマンエラーは大きく以下のように分類されます。

分類内容具体例
スリップ(slip)意図は正しいが動作を誤る正しい薬を間違った患者に投与
ラプス(lapse)記憶の失敗による見落とし確認したつもりで確認し忘れる
ミステイク(mistake)判断・計画そのものが誤り誤った病態認識に基づく処置
違反(violation)ルールを意図的に逸脱する確認手順を省略する

試験では「スリップ」と「ミステイク」の違いが狙われます。

スリップは意図は正しいが行動が誤るミステイクは意図(判断)そのものが誤りと覚えましょう。

ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)

国試最頻出の数字がこれです。

アメリカの損害保険会社の安全技師、ハインリッヒが提唱した法則で、労働災害の統計から導き出されました。

割合内容
1重大事故(死亡・重傷)
29軽微な事故(軽傷)
300ヒヤリ・ハット(無傷)

1件の重大事故の背景には、29件の軽傷事故と、300件のヒヤリ・ハット(インシデント)が潜んでいる。

この法則が示すのは、「ヒヤリ・ハットを放置しないこと」が重大事故の予防につながるという考え方です。

医療現場でインシデントレポートを提出するのは、まさにこの法則に基づいています。

スイスチーズモデル

イギリスの心理学者ジェームズ・リーズンが提唱したモデルです。

医療システムには複数の防護壁(チェック体制)があり、それぞれに穴(欠陥)が存在します。

普段はズレているため事故は起きませんが、複数の穴が偶然一直線に並んだときに事故が発生します。

これが示す教訓は「事故は一人のミスではなく、複数の要因が重なって起きる」ということです。個人を責めるのではなく、システムを改善する発想が重要です。

国家試験で狙われる「3つの鉄板ポイント」

POINT1:「インシデント」と「アクシデント」の定義を入れ替えるひっかけに注意!

国試でもっとも狙われるのが、インシデントとアクシデントの定義の混同です。

用語定義
インシデント(ヒヤリ・ハット)誤った医療行為などが行われそうになったが、患者への実害はなかったもの
アクシデント(医療事故)医療に関わる場所で、医療の全過程において発生した患者への害が生じたもの

ひっかけ選択肢の例

「インシデントとは、患者に実害が生じた出来事である。」

誤り(これはアクシデント)

「アクシデントレポートは、患者に影響がなかった事例にも提出する。」

誤り(影響がなかった場合はインシデントレポート)

「インシデント=影響なし」「アクシデント=影響あり」と明確に区別してください。

また、日本看護協会の定義では、医療事故の中でも医療従事者の過失によって患者に傷害が生じたものを特に「医療過誤」と呼びます。

用語過失の有無患者への影響
医療事故問わないあり
医療過誤あり(過失必須)あり
インシデント問わないなし

インシデントとアクシデントについては、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。

POINT2:ハインリッヒの法則は「語呂合わせ」で一発暗記!

数字の「1:29:300」は語呂で覚えましょう。

「いち(1)に(2)く(9)、さんびゃく(300)のヒヤリ」

→ 1件の重大事故・29件の軽傷事故・300件のヒヤリハット

もう一つのポイントは、この法則が医療分野のためではなく、労働災害(工場の事故)の統計から生まれたという点です。

ひっかけ選択肢の例

「ハインリッヒの法則では、1件の重大事故の背景に300件の軽傷事故があるとされている。」

誤り(300件はヒヤリ・ハット、軽傷は29件)

数字の対応関係を正確に覚えることが最重要です。

POINT3:「RCA」「FMEA」「KYT」の違いを整理しておこう

医療安全の手法として、以下の3つが試験に登場します。混同しやすいので比較表で整理します。

略称正式名称目的・特徴
RCARoot Cause Analysis(根本原因分析)事故が起きた後に原因を掘り下げる「振り返り型」
FMEAFailure Mode and Effect Analysis(故障モード影響解析)事故が起きる前にリスクを予測する「予防型」
KYT危険予知トレーニング現場の写真や図を見て潜在的な危険を話し合う訓練

ひっかけ選択肢の例

「RCAは、事故が起きる前にリスクを予測するために行う。」

誤り(事故後の分析がRCA、事前予測はFMEA)

覚え方:「R(リカバリー)=事後」「F(ファースト・予防)=事前」

実習や臨床での活用シーン

インシデントレポートはなぜ提出するのか

実習中、指導者から「ヒヤリ・ハットがあったらすぐに報告して」と言われる経験があるでしょう。これはまさにハインリッヒの法則に基づく取り組みです。

インシデントレポートの目的は、個人を責めることではなく、システムの改善のためです。

報告を促進するために、多くの医療機関では「ノーブレーム(非懲罰)文化」を推進しています。

転倒・転落リスクへのアプローチ

病棟で転倒リスクのある患者に対し、KYT(危険予知トレーニング)の視点でベッド周囲の環境を確認することが求められます。

  • ベッドの高さは適切か
  • 床に滑りやすいものはないか
  • ナースコールは届く位置にあるか

これらの確認は、「起きる前に防ぐ」FMEA的な思考そのものです。

チームSTEPPS(Team Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safety)

近年、医療安全の授業で登場するのがチームSTEPPSです。チームで安全を守るためのコミュニケーション手法で、以下のツールが含まれます。

ツール内容
SBARSituation(状況)・Background(背景)・Assessment(評価)・Recommendation(提案)の順で報告
CUSConcerned(懸念)・Uncomfortable(不安)・Safety(安全問題)と声に上げる手法
チェックバック指示を復唱して確認する

SBARは実習での申し送りや、医師への報告場面で非常に実践的に使えます。

【1分チェック】必修過去問に挑戦!

問題: 第112回看護師国家試験・必修問題(午前)

ハインリッヒの法則で1件の重大事故の背景にあるとされる軽傷事故の件数はどれか。

  1. 10件
  2. 29件
  3. 100件
  4. 300件

正解:2番(29件)

解説:

ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)では、1件の重大事故の背景に、29件の軽傷事故と**300件のヒヤリ・ハット(インシデント)**が潜むとされています。

  • 選択肢1(10件):根拠のない数値。切り捨て。
  • 選択肢2(29件)正解。軽傷事故の数。
  • 選択肢3(100件):根拠のない数値。切り捨て。
  • 選択肢4(300件):誤り。300件はヒヤリ・ハット(無傷)の件数。「軽傷事故」ではない点が典型的なひっかけ。

「300=ヒヤリ・ハット(無傷)」「29=軽傷事故」の対応を明確に区別することが合否のカギです。

まとめ

この記事で学んだ、絶対に忘れてはいけないポイントをまとめます。

  • ハインリッヒの法則は「1:29:300」。1重大事故・29軽傷・300ヒヤリハット。300はヒヤリ・ハットであり、軽傷ではない
  • インシデント=患者への実害なしアクシデント=患者への実害あり
  • 医療過誤は医療事故の中でも「過失あり」のもの
  • RCA=事後分析FMEA=事前予測KYT=現場での危険予知訓練
  • ヒューマンエラーの原因追求は個人ではなくシステムへ
  • スイスチーズモデル:複数の穴が重なったときに事故が発生する
  • インシデントレポートの目的は個人を罰することではなく、システム改善
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