インシデントとアクシデント

医療安全・事故防止
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「インシデントとアクシデントって何が違うの?」

「レベルの数字が多すぎて覚えられない…」そんな不安を持つ看護学生は少なくありません。

必修問題では「インシデントかアクシデントか」を問う問題や、レベル分類の数値を入れ替えたひっかけが頻出です。

この記事を読めば、以下のことが整理できます。

  • インシデント・アクシデントの正確な定義と違い
  • 厚生労働省が示すレベル分類(0〜5)の基準
  • 試験で狙われるひっかけパターンと語呂合わせ
  • 臨床での実際の活用場面

サクッと読んで、得点源に変えましょう!

インシデントとアクシデントの基本を整理

インシデントとは、医療行為において患者に被害が及ばなかった(または被害が軽微だった)事案を指します。

「ヒヤリ・ハット」とも呼ばれ、「危うくミスになるところだった」「ミスが起きたが患者への影響はなかった」という状況がこれに当たります。

厚生労働省の定義(医療安全対策ネットワーク整備事業より)

「誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、または、誤った医療行為などが実施されたが、患者への影響が認められなかったもの」

アクシデントとは、患者に何らかの被害や影響が生じた事案を指します。

インシデントとは異なり、実際に患者へのダメージ(身体的・精神的・財産的)が発生したことが大きな特徴です。医療事故報告の対象となります。

インシデントとアクシデントの比較表

項目インシデント(ヒヤリ・ハット)アクシデント
患者への影響なし、または軽微あり(被害が発生)
別称ヒヤリ・ハット医療事故
報告義務院内報告(義務ではないが推奨)院内報告+場合によっては行政報告
対応の目的再発防止・システム改善原因究明・被害への対応・再発防止

医療事故のレベル分類(0〜5)

厚生労働省の指針に基づき、インシデント・アクシデントはレベル0〜5の6段階で分類されます。

この数字は必修問題で頻出です。必ず表で確認しましょう。

レベル分類内容
レベル0インシデント誤った行為が患者に実施される前に発見・回避された
レベル1インシデント誤った行為が実施されたが、患者への影響はなかった
レベル2アクシデント観察強化・バイタルサイン確認などが必要になった(処置不要)
レベル3aアクシデント簡単な処置や治療が必要になった(医師の診察が必要)
レベル3bアクシデント濃厚な処置や治療が必要になった
レベル4aアクシデント永続的な障害・後遺症が残ったが、日常生活への影響は少ない
レベル4bアクシデント永続的な障害・後遺症が残り、日常生活への影響が大きい
レベル5アクシデント死亡(原疾患の自然経過によるものを除く)

レベル0・1がインシデント、レベル2以上がアクシデント(医療事故)です。

ハインリッヒの法則との関係

インシデントとアクシデントを語るうえで欠かせないのがハインリッヒの法則です。

1:29:300の法則

1件の重大事故(死亡・重症)の背景には、29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリ・ハット(インシデント)が存在する。

この法則は「インシデント段階で問題を潰すことが、重大事故の予防につながる」という考え方の根拠です。

試験では「1:29:300」の数字を問われることがあります。

国家試験で狙われる「3つの鉄板ポイント」

POINT1:「インシデント=患者への影響なし」の境界線がひっかけになる!

必修問題でよく使われるひっかけは、レベル1とレベル2の境界です。

  • レベル1(インシデント): 誤った行為が実施されたが、患者への影響がなかった
  • レベル2(アクシデント): 誤った行為が実施され、観察の強化が必要になった

たとえば「与薬ミスが起きたが、患者のバイタルサインに変化はなく、医師の診察も不要だった」→ レベル1(インシデント)です。

ひっかけ選択肢の例

「患者に誤った薬を投与したが、バイタルサインに変化がなかったため、アクシデントには該当しない」

正しい記述(レベル1インシデント)

「医師が患者の経過を観察するよう指示を出した」

→ これはレベル2(アクシデント)に変わります!

「観察強化の指示が出た時点でアクシデント」という境界線を押さえましょう。

POINT2:語呂合わせで「1:29:300」と「レベル分類」を完全攻略!

ハインリッヒの法則の語呂合わせ

いちにくさんびゃく(1・29・300)」 → 「いちにク(29)で さんびゃく転ぶ」

1件の重大事故:29件の軽微な事故:300件のヒヤリ・ハット、という順番で覚えましょう。

② インシデント・アクシデントの境界を覚える語呂合わせ

0・1はセーフ(インシデント)、2からアウト(アクシデント)

レベル0・1 → インシデント(患者への影響なし) レベル2以上 → アクシデント(何らかの対応が必要)

③ レベル3a・3bの違いを覚えるコツ

a(あっさり)→ 簡単な処置、b(がっつり)→ 濃厚な処置

  • 3a:aはアルファベットの前半=「あっさり」した処置で済んだ
  • 3b:bはbig(大きい)=「がっつり」濃厚な処置が必要

POINT3:「医療事故」「医療過誤」「インシデント」の類似用語との比較

試験では似た用語の定義の取り違えが狙われます。以下の表で整理しましょう。

用語意味患者への影響過失の有無
インシデントヒヤリ・ハットなし〜軽微問わない
アクシデント医療事故(広義)あり問わない
医療事故医療に起因した有害事象あり問わない
医療過誤医療従事者の過失による医療事故あり過失あり

「医療過誤」は過失(注意義務違反)が前提です。

医療事故やアクシデントはすべてに過失があるわけではなく、予測不能な合併症なども含まれます。

ひっかけ問題の例

「医療事故はすべて医療過誤である」

×(誤り):医療過誤は医療事故の中でも過失が認められるものに限定されます。

実習や臨床での活用シーン

インシデントレポートの目的は「犯人探し」ではない

臨床では、インシデントが発生するとインシデントレポート(ヒヤリ・ハット報告書)を記載します。

このレポートの目的は「個人を責めること」ではなく、「システムの問題を発見し改善すること」です。

たとえば「患者Aさんに投薬するところを患者Bさんに渡しそうになった(直前に気づいて未遂)」

→ これはレベル0のインシデントです。

このとき問うべきは「なぜ確認が漏れたか(ダブルチェックの仕組みがなかった、ラベルの見づらさ等)」であり、個人の責任追及だけでは再発防止になりません。

「6R確認」との関連

インシデント予防の実践として、薬剤投与時の6R確認があります。

6R内容
Right Patient(正しい患者)氏名・患者IDの確認
Right Drug(正しい薬剤)薬品名・成分の確認
Right Dose(正しい用量)量・単位の確認
Right Route(正しい投与経路)経口・点滴・注射等の確認
Right Time(正しい時間)投与タイミングの確認
Right Purpose(正しい目的)投与目的の確認

「5R」「6R」は問われることがあります。

5Rは上記から「Purpose」を除いたもの。「6Rにはなぜ目的(Purpose)が追加されたか?

→ 薬剤の投与目的を確認することで、患者への説明と観察ポイントが明確になるためです。

アクシデント発生時の対応フロー

実際の臨床でアクシデントが発生した場合の流れは以下の通りです。国試でも問われます。

  1. 患者の安全確保・状態確認(最優先)
  2. 医師・上司への報告
  3. 患者・家族への説明
  4. 記録・レポートの作成
  5. 再発防止策の検討

「まず行うべきことは何か」という問いに対して、①の患者の安全確保が最優先です。

「報告」や「記録」が先になる選択肢はひっかけです。

【1分チェック】必修過去問に挑戦!

問題: 第110回看護師国家試験 必修問題(改変)

医療施設において、患者への影響はなかったが、誤った薬剤を別の患者の薬と取り違えそうになり、投与直前に気づいて回避した。この事案として正しいのはどれか。

  1. アクシデント
  2. インシデント(レベル0)
  3. インシデント(レベル1)
  4. 医療過誤

正解:2番(インシデント・レベル0)

解説:

選択肢を一つずつ検討します。

  • 1(アクシデント)→ ×: アクシデントは患者に何らかの被害や影響が生じた事案です。今回は患者への影響が発生していないため、アクシデントには該当しません。
  • 2(インシデント・レベル0)→ ○: レベル0は「誤った行為が患者に実施される前に発見・回避された」事案です。今回は投与直前に気づいて回避しているため、レベル0に該当します。
  • 3(インシデント・レベル1)→ ×: レベル1は「誤った行為が実施されたが、患者への影響がなかった」事案です。今回は実施前に回避しているため、レベル1ではありません。「実施された」vs「回避した」の違いが鍵です。
  • 4(医療過誤)→ ×: 医療過誤は医療従事者の過失によって患者に被害が生じた事案です。今回は患者への被害がなく、この段階で医療過誤とはなりません。

まとめ

この記事で学んだ「絶対に忘れてはいけないポイント」を確認しましょう。

  • インシデント(レベル0・1): 患者への影響がない事案。レベル0は「回避」、レベル1は「実施されたが影響なし」
  • アクシデント(レベル2以上): 患者への何らかの影響が生じた事案。レベル2から始まり、レベル5(死亡)まで
  • ハインリッヒの法則: 1(重大):29(軽微):300(ヒヤリ・ハット)
  • 医療過誤 ≠ 医療事故(アクシデント): 医療過誤には「過失」が必要。すべての医療事故が医療過誤ではない
  • アクシデント発生時の最優先行動: 患者の安全確保・状態確認
  • インシデントレポートの目的: 個人責任追及ではなく、システム改善による再発防止
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